時間外労働を強要すると生産性が落ちて被害は甚大 まずは会社が就業規則を守らなければ

ひとりで会社を設立して仕事している。

先日「うちの会社の営業会議に出てみませんか」と声がかかった。

見こみ客に対して、ともに営業をかける協力会社からの要望。その会社の営業部隊と情報共有ができるし、なによりおもしろそうなので、喜んで訪問したんだけど、朝礼でちょっとしたトラブルが!

就業規則では9時スタートなんだけど8時50分に出社したら遅刻になる

その日の予定は、協力会社の朝礼が8時45分から。9時から営業会議というもの。

8時30分に事務所に訪問し、準備をしていた。他社の朝礼というのはおもしろい。

しかし、総務の女性が遅刻して出社し、リーダーに怒られ、その女性が泣き出してひと悶着、という場面があった。

朝礼のあと、営業会議はいい感じで進行し、営業部リーダーのAさんとのランチで、朝礼のことが話題になった。

Aさん
さきほどはお見苦しいところを
オレ
それなんですが、就業規則での御社の始業時間は?
Aさん
9時です。さっきの遅刻者は朝礼には遅れましたが、8時50分には職場に到着していましたから、実は遅刻ではないのですが

この問題、日本の企業ならよくあることかも。

経営者には想像できないようだが、この問題は会社組織に甚大なダメージを与え続ける。

それを解決する手はひとつしかないんだけど、それを言う前に、Aさんに以下のような事例を話した。

母豚が出産中でも中国人労働者は残業しない 怒った社長が打った手は?

ある養豚場の社長にきいた話。

人手不足のため、中国人の労働者を増やした。日本人労働者と比べると、みなとても時間にシビア。1秒たりともサービス残業をしない姿勢だそう。

いちばん困ったのが、豚の分娩。出産。母豚の出産には、人の手助けがいる。しかし、中国人労働者は、出産中だろうが時間がくれば仕事を切り上げ、帰ってしまう。

出産のお手伝いを途中でやめて、母豚も子豚も死んでしまうことがあるそうで、あるとき社長はさすがに怒った。

おまえたちに人の心はないのか。養豚とはいえ、新たな命の誕生をなんとも思わないのか、と。

すると中国の方、

「母豚も新たに産まれてくる子豚も社長の資産であって、それを守るためになぜわたしの人生をタダで捧げなければならないの?」

と。

これには社長も返答につまり、三日ほど考え抜いたあげく、ついに決意し、会社のルールを刷新した。

朝礼や着替えなど、これまで就業時間外にやることになっていたことを、すべて就業時間内にやることに。

そのうえで、豚の分娩だけは特別な残業手当を設定し、従業員とコミュニケーションをはかり、納得してもらったそうな。

効果は絶大。中国人労働者とのトラブルが激減しただけでなく、なぜか従来から働いていた日本人労働者のモチベーションまで上がり、様々な作業に要する時間が減り、職場環境もよくなったとのこと。

「日本人が勤勉で外国人が怠け者なんて、あれはウソだね。会社が従業員の時間を搾取するのがいちばんダメなんだよ」

とは、その社長の弁。

“時間外遅刻”の叱咤に怒ったトップ営業マンが実行した「究極のサボりかた」とは?

以前にいっしょに仕事をした営業マンBさん。Bさんにある案件の見積をお願いしたところ、

「弊社からなら○○円というところですね。わたし個人だと、その下をくぐれますよ」

と。

Bさんの勤め先でなく、Bさん個人と取り引きすることで、安く仕入れることができるというわけ。

これからの時代、サラリーマンも副業はどんどんやったほうがいいとは思うけど、こういうのは労働法における競業避止義務にひっかかるのでやめておこう。

ぼくも会社員時代、取引先から「キミ個人にお金払うからもっと安くならない?」と持ちかけられることがよくあったので、やってる人はやってるのかな。

しかし、続けてBさんにきいた話は、ビックリしてイスからすべり落ちそうになった。

Bさん、会社に勤めつつ、自分の株式会社を設立し、自分の会社にどんどん仕事を回しているという。

「いけない副業」をやってる人はみな個人事業主でやってるんだろうと思ってた。まさか、会社に勤めつつ自分で会社を設立する、というのは驚き。

なぜそこまでするのか、興味があったのできいてみた。

きっかけは、新人時代に「時間外遅刻」が多く、上司に何度もこっぴどく叱られたから。

時間外遅刻って、まさにこの記事で問題にしている「本当は遅刻じゃないのに遅刻となる問題」。Bさんうまいこという……

就業規則では遅刻じゃないのに、上司からはそれで叱られる。そのせいでさらに仕事の時間が減り、サービス残業を強要される。

いいだろう。会社が就業規則というルールを破るなら、オレだってルールを破ってやる!

怒ったBさんは、あらゆる方法をつかって仕事をさぼることに全力を注いだ。仕事を短時間で終わらせ、時間があまったらさぼる。

さぼっている時間は、さらに時間をあまらせるため、喫茶店で仕事の本を読んでいたそうな。それ、さぼっているのか勤勉なのか、よくわかんないけど。

仕事の勉強をする、仕事に要する時間が減る、余った時間でまた勉強する。……これをくり返していると、いつのまにか仕事ができるようになり、成績がグングン上がり、ノルマを軽く上回るほどに。

あんまり成績上げても給料は増えないし、ノルマがあがるだけなので、ついには自分の会社を設立し、勤め先と自分の会社に適当に利益を配分しているそう。

勤め先にバレない工夫は幾重にも張り巡らしていて、詳細は書けないが「なるほど !」と。

Bさんがやっていることは、よくない。

しかし、元をたどれば勤め先の会社が就業時間外の労働を強要したことが原因なので、Bさんを責める気にはなれない。

会社がルールを破れば従業員も破る それを想像できない経営者が多すぎる

以上、会社組織の時間管理について、事例を二つ上げてみた。

会社組織は、従業員の時間を、搾取したくてたまらない。就業規則がありながら、朝礼や清掃などは、就業時間外にさせたい。

事務所の清掃や整理整頓を重視する経営者は多い。その重要なことを時間外に従業員に強要する、ということの矛盾を自覚している経営者は多くはない。

社是や社訓にどれほど美辞麗句を連ねても、朝の15分を搾取してしまうと、従業員はだれも会社の正義を信じない。

会社が就業規則というルールを破るなら、従業員も破ってかまわない、という理論が成り立つ。Bさんのように。

そして、優秀な従業員ほど「さぼりかた」も優秀なので、会社組織に与える被害は甚大なものとなる。

この問題の解はひとつだけ。

会社がまず、就業規則を守ること。

就業規則がありながら、さらにそれ以上の時間外労働を強要する、というのは搾取でしかない。

搾取された側は、それを取り返そうとする。搾取と取り返しの応酬で、会社組織の生産性はどれほど落ちていることか。

ランチタイムの世間話的に、Aさんとそんな話をした。

中間管理職であるAさんには、不快な部分もあったはず。でも興味を持ってきいていただいたよう。